資材や人件費の値上がりを見積りに反映したいとき、何を見ればよいのでしょうか。月刊「建設物価」のような物価の本は有料ですが、国や日本銀行が無料で公表している数字もあります。それぞれ分かることが違うため、目的に合わせて使い分けると、少ない手間で説得力のある根拠をそろえられます。本記事では、資材の値段や工事費の値動きを調べる4つの手段と、工務店・建設会社の経営者が見積りや価格の交渉で使い分ける方法をまとめます。
値段を調べる4つの手段
| 手段 | 分かること | 出す人 | 費用・頻度 |
|---|---|---|---|
| 物価の本(月刊「建設物価」・月刊「積算資料」など) | 個々の資材の、地域ごとの今の値段 | 建設物価調査会・経済調査会 | 有料・毎月 |
| 公共工事設計労務単価 | 職種ごと・都道府県ごとの人件費の基準 | 国土交通省 | 無料・年1回 |
| 建設工事費デフレーター | 工事費全体の値動き | 国土交通省 | 無料・毎月 |
| 企業物価指数 | 企業の間で売り買いする物の値段の大まかな動き | 日本銀行 | 無料・毎月 |
大まかには、個々の資材の今の値段は物価の本、人件費の基準は労務単価、工事費全体の流れはデフレーター、物の値段の大きな流れは企業物価指数と覚えておくと使い分けやすくなります。
1. 物価の本:個々の資材の今の値段
月刊「建設物価」(建設物価調査会)や月刊「積算資料」(経済調査会)には、資材の価格や工事費が地域ごとに毎月載っています。国や自治体も積算の材料にしており、「この品目のこの地域の値」を示したいときに向いています。
有料の資料なので、発注者や施主に示すときは、誌面をそのまま配るのではなく、購読の決まりの範囲で、確かめた値と出どころ(本の名前・号・品目)を書くようにします。
2. 公共工事設計労務単価:人件費の基準
国土交通省が毎年公表する、公共工事の積算に使う職種ごとの人件費の単価です。2026年3月から使う単価(2026年2月17日発表)は、全国全職種の単純平均で前年度より4.5%上がり、加重平均は25,834円と初めて25,000円を超えました。2013年度の改定から14年続けて上がっています。
人件費が上がっている流れを示す根拠として使えます。ただし、これは設計の単価で、下請に払う賃金の下限や、職人の日当を決めたものではありません。「国の基準が毎年上がっている」という流れを伝える材料として使います。
3. 建設工事費デフレーター:工事費全体の値動き
国土交通省が毎月作って公表している指数で、名目の工事費を基準の年度の実質の額に直すために使います。2026年4月分の公表から、基準の年度が2020年度になりました(2026年8月31日に2020年度以降の値が更新されています)。
「数年前と比べて、同じ工事にかかる費用が全体としてどれだけ上がったか」を示すのに向いています。使い方と計算の手順は、建設工事費デフレーターの使い方で詳しく解説しています。値を使うときは、基準の年度と公表の時点を必ず書き添えてください。
4. 企業物価指数:物の値段の大きな流れ
日本銀行が毎月公表している、企業の間で売り買いする物の値段の指数です。建設に限らない、物の値段全体の大きな流れを示すのに使えます。最新の値と公表日は、日本銀行のページで確かめてください。
目的別の使い分け
- 見積りの単価の根拠を示したい→物価の本の該当する号と品目+仕入れ先の見積書
- 人件費が上がっている理由を伝えたい→公共工事設計労務単価の推移
- 数年前の工事と比べて全体が上がったことを示したい→建設工事費デフレーター
- 物の値段全体が上がっている流れを添えたい→企業物価指数
本を持っていない場合でも、国と日本銀行の無料の公表に、仕入れ先の見積書や請求書の推移を組み合わせれば、十分な根拠になります。2024年12月13日に施行された改正建設業法では、資材の高騰などのおそれがあるときは、契約を結ぶまでに注文者へその旨と根拠を通知することになりました(第20条の2第2項)。ここで集めた数字は、その根拠としても使えます。
自社の仕入れ値を記録しておく
公表の数字は流れを示すのに向いていますが、「この工事でいくら上がったか」を示すいちばん強い根拠は、自社の仕入れの記録です。月に一度、よく使う資材を5〜10品目に絞り、次の欄を表に残しておくと、見積りや交渉のときにすぐ出せます。
- 品目と規格(例:異形棒鋼 D13、構造用合板 12mm)
- 仕入れ先と、見積書・請求書の日付
- 単位あたりの値段と、前の月・前の年の同じ月の値段
- 同じ時期の物価の本の値、または企業物価指数の値(手元にある方)
- メモ(納期が延びた・最低の注文の量が変わった など)
自社の記録と公表の数字が同じ向きに動いていれば、「自社だけの事情ではない」ことも合わせて示せます。反対に、自社の値だけが大きく上がっているときは、仕入れ先や買い方を見直すきっかけになります。記録は表計算のソフトで十分です。続けておくと、次の年の見積りの見通しも立てやすくなります。
よくある質問
Q1. 無料の公表だけで、値上げの根拠になりますか?
なります。人件費は公共工事設計労務単価、工事費全体はデフレーター、物の値段の流れは企業物価指数で示せます。個々の資材は、仕入れ先の見積書や請求書の推移をあわせて示すと説得力が増します。
Q2. 労務単価が上がったので、職人の日当も同じだけ上げる必要がありますか?
公共工事設計労務単価は公共工事の積算に使う設計の単価で、職人の日当や下請に払う賃金を決めたものではありません。人件費の流れを示す根拠として使い、実際の賃金は会社と働く人の取り決めで決めます。
Q3. デフレーターの値は、いつのものを使えばよいですか?
比べたい2つの時点の値を、同じ基準の年度でそろえて使います。2026年4月分から基準が2020年度に変わったため、古い資料の値と混ぜないよう、基準の年度と公表の時点を書き添えてください。
まとめ
資材や工事費の値段を調べる手段は、①物価の本(個々の資材の地域ごとの値・有料)、②公共工事設計労務単価(人件費の基準・無料・年1回)、③建設工事費デフレーター(工事費全体の流れ・無料・毎月)、④企業物価指数(物の値段の大きな流れ・無料・毎月)の4つです。目的に合わせて使い分け、出どころと時点を書き添えれば、見積りや価格の交渉の根拠として使えます。まずは、いま気になっている資材や工程について、どの手段で示せるかを整理してみてください。
見積りの相手や協力会社を探すときは、全国の建設業許可業者を業種や地域から調べられる建設業許可データベースの企業検索もお使いください。
出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」・国土交通省「建設工事費デフレーター」・日本銀行「企業物価指数」・建設物価調査会「月刊 建設物価」・経済調査会(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。数値や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認してください。
あわせて読みたい
- 建設工事費デフレーターを交渉の武器にする — 資材高騰分を発注者に認めさせる根拠資料の作り方
- 資材高騰で建設会社が倒産する前に|利益を守る価格転嫁・契約見直しの実務
- 【2026年最新】建設資材高騰はいつまで続く?セメント・鉄筋・木材の価格推移と今後の見通し
都道府県から建設業許可業者を探す
全国の建設業許可取得業者を都道府県・業種から検索できます。
自社の施工事例は、検索で見つけてもらうにはどう載せればいい? → 作成から更新まで頼めるWordPress作成代行センター
